2019年9月8日、第99回全国高等学校ラグビーフットボール大会の大阪予選が始まった。
常翔啓光学園(旧・啓光学園)高校
常翔啓光学園(旧・啓光学園)は全国優勝7回の名門である。苑田右二氏、大西将太郎氏、佐々木隆道選手、金正奎選手、山下楽平選手など日本代表や大学、トップリーグで活躍した選手は多数。また、完成度の高いラグビーは、全国の高校生ラガーマンのお手本であった。
しかし、2019年の大阪予選出場校に常翔啓光学園の名前はなかった。2008年度の全国優勝を最後に、全国大会の出場すらない。
【永久保存版】 平成スポーツ史 ≪ラグビー編≫ 啓光学園ロイヤルブルーの壁(B.B.MOOK1443/平成スポーツ史vol.2)
その理由は、諸事情から学校が方針転換しラグビー部の強化をしなくなったことにある。そして、ついに部員が足りなくなった。この秋は、合同E(牧野・枚方・北かわち皐ケ丘・枚方津田・長尾・常翔啓光) として予選に出場。合同チームは、仮に大阪で勝ち上がったとしても全国大会に出ることはできない。苦渋の決断だった。
このようすがテレビ番組でも取りあげられており、部員の奮闘する姿が多くの人に知られることになった。与えられた環境の中で最大限に努力している姿から、楽しみなチームになっていく予感がある。今後も注目していきたい。
島本高校
大阪のラグビー事情に詳しい方なら、島本高校をご存知だろう。公立の名門であり、全国大会には4回出場、そして、廣瀬佳司、堀江翔太という歴代の日本代表の中でも特筆すべき二人を輩出しているからだ。
廣瀬佳司氏は、京都産業大学からトヨタ自動車とすすみ活躍した。日本代表キャップは40、ワールドカップには1995、1999、2003と3大会連続で出場しており、ゴールデンブーツと呼ばれた選手だ。
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堀江翔太選手は、今回の2019ワールドカップでも大活躍し、もう誰もが知る存在となった。帝京大学からパナソニック、スーパーラグビーでも活躍してきた。日本代表キャップは66と歴代TOP10に入る。
その島本高校は、現在部員が1人ということだ。大阪予選には、合同C(大商学園・春日丘・高槻北・島本・三島・清水谷・緑風冠)として出場した。なぜ、こんなことが起こっているのだろうか。
大阪の高校ラグビーの変化
今大会の大阪予選の出場校は44校。正確には34校と合同チームが10チーム。合同チームは全国大会に出場できないため、全国出場資格があるのは34校となる。
この数字は大きいのかどうか、2019の予選出場校数を学校数の多い都道府県と比べてみたい。
東京都:54校(うち合同7校)
愛知県:45校(うち合同6校)
福岡県:37校(うち合同2校)
埼玉県:36校(うち合同3校)
兵庫県:32校(うち合同4校)
神奈川県:26校(うち合同4校)
こうやってみると、ラグビー王国のイメージのある大阪にしては予選出場校は多くないように見える。それでは、過去の予選出場校数と比較してどうか。
2014年大阪60校(うち合同12校)
2009年大阪69校(うち合同15校)
2004年大阪78校(うち合同16校)
10年前の2009年と比べて半減していることがわかる。データはここまでしかつかめなかったが、2004年に合同が16校あるということから、さらに10年、20年遡ればおそらく100校は軽く超えていたのではないだろうか。
その理由は、少子化にあるのは間違いない。今の子供たちは団塊ジュニアのおよそ半分しかいない。その事情はどの部活も同じかもしれないが、他競技に比べてラグビーは15人と多いことがある。一旦部員不足になると、人数が戻りづらいこともあるだろう。
さらに理由をあげるとするなら、大阪の学区編成の変遷も影響しているかもしれない。全国的に学区が統合される流れだが、大阪では以下のように変わってきた。
2006年まで9学区制
2007-2013年4学区
2014年から学区なし
少子化になるにつれ選べる高校が幅広くなれば、ラグビーができる高校は一定数維持できる可能性はある。もしかしたら、あと5年早く学区の統合がすすんでいたら、現在の大阪のラグビー部のある学校はもう少し多かったのかもしれない。そして、島本高校のような公立の名門も人数を維持できていたのかもしれない。
ちなみに、学区再編にかじを切ったのは橋下徹氏。ご自身は大阪北野高校ラグビー部出身で全国大会に出場されている。
大阪では、その島本高校が全国に出場した1996年以来、公立高校の全国出場はない。大阪の高校ラグビーが盛り上がり、レベルを上げていくには、常翔啓光学園のような名門校の復活や島本高校のような公立高校の頑張りが必要である。
今回のラグビーワールドカップの成功は、全国で部員不足に悩むラグビー部にとっては二度とないようなチャンスかもしれない。
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